成りたろう 本 映画 切手 を語る: 2015

2015年2月18日水曜日

【本の世界】河野多恵子の世界


巨星、堕つ。

河野 多恵子 平成27年1月29日 逝去 享年88歳

Blog連続で、訃報のコラムになってしまいました。
しかも、文学界で女流の巨星が続けて。

大阪府生まれ。西道頓堀の椎茸問屋の娘。
旧制大阪府女子専門学校(新制大阪女子大学の前身、現大阪府立大学)卒業。
1950年、丹羽文雄主宰の『文学者』同人となる。
1961年『幼児狩り』で注目され、1963年『蟹』で芥川賞を受賞する。
1989年、日本芸術院会員。
大庭みな子と共に女性初の芥川賞選考委員となり、2007年まで務めた。

谷崎潤一郎の衣鉢を継ぎ、マゾヒズム、異常性愛などを主題とする。また『谷崎文学と肯定の欲望』(1976)で読売文学賞を受賞するなど谷崎の読み手としても知られ、『谷崎文学の愉しみ』などの評論を書き継ぐほか谷崎潤一郎賞選考委員を務めた経験もある。夫は洋画家の市川泰(1925 - 2012)。

最晩年の谷崎が文京区関口台アパートという高級マンションに住んでいた時、瀬戸内晴美が同じ階にいたので河野が来て、これが谷崎先生の部屋だと教えられてドアに口づけしたら、部屋を間違えていたなどということもあった。

『男友達』を出した時、「ベッドシーンだらけだ」と批判され、計算したら20%だったので反論文を書こうとして瀬戸内に相談すると、竹西寛子にも相談したらいいと言われ、竹西は、作家としてそういうことをしていいのは三回だけ、と言ったのでやめにした。

1990年、永山則夫が日本文芸家協会に入会しようとした際反対し、「そんな人が入ってきたら、あたし、怖いわよ」と言ったとされる。

また平林たい子を高く評価し、平林たい子記念会理事長を務めた。

(WikiPedia より)


筆者が、1964年生まれ。

それより前の63年 既に、芥川賞をえて文壇の中心にいた。

作品内容は大人の世界にて、中学校の頃 作品を読み始めても、周辺に知る者がいなかったことを思いだす(単なる、マセガキでした・・・)。

多くの初期作品が、日本の読者レベルの低下により絶版になって久しい。
が、「講談社文芸文庫」で復刻したものが多く。

文庫ながら高額ではある。が、是非に、てにとることをお勧めしたい。

作品は、人間の、特に女性のエゴ、業、恐ろしさ、底をえぐりだす。
同じ女性目線の人間像でも、例えば、向田のそれは、生活臭がし、ほのぼのする場面もあろう。が、河野のそれは、どこまでも重く、暗く、救いようがない。

が故に、魅力的で、納得できる真実がそこにあると思う。


年輪をへて、益々、制作意欲旺盛なことは、日本文学界のみならず、文化、ひいては、国体そのものにとって大いなる財産である。

筆者読破の近著にて。

「後日の話」・・・おそるべき傑作。20世紀文学の資産。

「秘事」・・・個人的には、若干の衰えを感じた。それも、こちらの求めるもの、過去作品を承知の厳しい批評にて。

など、巷の書店で手に入ると思う。
是非、読破されたし。

合掌。


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2015年1月13日火曜日

【本の世界】宮尾登美子の世界




巨星、堕つ。


宮尾登美子 平成261230日 逝去


高知の遊郭で芸妓紹介業を営む岸田猛吾の子として生まれる。
この遊廓のことは『櫂』に描かれている。
12歳で父母が離婚し父に引き取られる。1943年に高坂高等女学校を卒業し、吾川郡池川町(現仁淀川町)の安居国民学校の代用教員となる。1944年、同僚の前田薫と結婚。心臓神経症を発症し、長く悩まされる。

1944年満蒙開拓団の一員として家族で満洲に渡る。長女を出産するが、敗戦のため辛酸をなめ、1946年高知へ引き揚げ。この満洲体験は『朱夏』に描かれる。1947年肺結核で病臥する中、『小説新潮』などを読む。1948年初めての小説「村芝居」を『文藝首都』に投稿。1949年に母、1951年に父を失う。1951年から1958年まで村立保育所の保母として勤務。1958年高知県社会福祉協議会に保育係として勤務。1962年、神戸で取材して書いたラジオドラマ「真珠の家」がNHK高知放送局のラジオドラマ脚本募集で佳作一席となり、仕事を辞め文筆生活に入る。

1962年前田とみ子の名で書いた『連』で婦人公論女流新人賞を受賞、1963年同作で直木賞候補となる。

協議離婚。1964年「湿地帯」を『高知新聞』に連載(前田とみ子名義)。高知新聞社学芸部記者・宮尾雅夫と再婚。1966年夫とともに上京。婦人誌、女性誌のライターをし、赤ちゃんとママ社に就職。1968年第一生命住宅に転じる。

1972年、それまで劣等感を感じていた生家のことを書く決心をし、『櫂』を自費出版、1973年同作で太宰治賞を受賞し、出世作となる。1977年『陽暉楼』で直木賞候補。『寒椿』で女流文学賞受賞。

1979年『一絃の琴』で直木賞を受賞、53歳であった。
1983年『序の舞』で吉川英治文学賞受賞[1]

作品のテーマは一貫して女性であり、自伝ものから出発して、さまざまな分野に新境地を開いている。

『東福門院和子の涙』など、歴史の中で弄ばれるはかない女性を描いた歴史小説が有名。一方で、『クレオパトラ』では、悪女や悲劇のヒロインとしてつくりあげられてきたこれまでのクレオパトラ像を否定して、新たな解釈で浮かび上がらせている。また一方で歴史的事実からは逸脱した解釈による創作も見られる[要出典]

2005年の大河ドラマ『義経』は、『宮尾本 平家物語』と『義経』が原作。2008年には『天璋院篤姫』が大河ドラマ化されたほか、2009年から放送の『坂の上の雲』には外部諮問委員として参加している。

(WikiPedia より)

宮尾登美子と、山崎豊子の初期の頃は、日本の古き良き時代の「女」の世界である。

双方、苦労・辛酸が描かれ、決して、“良き”などと言葉がはまるとは思えないでしょう。

そうなのです。
しかし、最後まで読むと、とても、爽快な気分になるのです。

何故なら、そこには、我々日本人の遺伝子ともいうべき、“清く 正しく 美しく”が満載だからです。

そして、その正義は、ささやかでも、最後は、勝つのです。


多くの宮尾作品の中で、個人的に、勇気をもらい、心をとらえた作品を敢えてあげるとすれば、以下の2つ。

『きのね-柝の音』朝日新聞社 1990 - のち文庫、新潮文庫
・・・歌舞伎の世界で脇役、底辺の地位から、主役まで、地道な愛で這い上がる、女一代記。

『藏』毎日新聞社 1993 - のち中公文庫 1995/角川文庫
・・・盲目のハンデをものともしない。我がまま娘が周辺を巻き込んで、皆を幸せにする、どこまでも幸福なお話。

知る限り唯一の日本人以外の女性を描いた「クレオパトラ」は機会があれば、読んでみたい。


人は亡くなっても、その、偉大な作品は、後世まで我々を楽しませ、勇気をくれる。


合掌。


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2015年1月4日日曜日

【本の世界】小説らしい小説 「 もしもし下北沢 」 よしもとばなな

よしもとばなな  「もしもし下北沢」  幻冬舎文庫を読んだ。
 

松川の同じ歳で、文学界の巨匠が二人いる。

 一人は、江國かおり、ひとりは、よしもとばなな。

 特に、ばななは、デビューが早く、幸運に恵まれ、父親のネームバリュー・・・があり、読んだことはなくとも、名前は知っている。かような人も多きのではないだろうか。

 これが、ともすれば、七光りでしょ?的な先入観につながることも。 しかし、一度読めば、そんなものは一切関係ないことが、すぐに判る。

更に、質をあげ、維持し続けることが、プロの証。 長く、これに、十分に応えつづけている。

本作は、毎日新聞の連載小説である。 新聞小説にありがちな冗長さを指摘されたらしいが、そうだろうか?

 感じない。

冗長ではなく、丁寧なのだ。

 実父の不倫無理心中による、「死」と云う一見、スリリングなつかみから物語は始まる。 そして、残された、妻(母)と娘の再生の物語として進む。

 つかみに反して、その展開は、平々凡々な生活のお話。

日々の心の機微、揺れ、前進と後退・・・これが冗長にみえるのかもしれないが、それこそが、普通の人間で、どこにでもいる人間で、読者個々人の中にある人間であって。 だからこそ、盛り上がりに欠けるものの、親近感、納得感を得ることができるのではないだろうか。

 ストーリーテラー、トリックの妙、も小説の魅力、醍醐味である。 が、やはり、本質は、人間(主人公)を“描く”こと、だと思うし、異論はないだろう。 であれば、本作は、数多の小説の中の小説らしい、小説、と云うべきもの。

 惜しむらくは、あくまで私見ながら。 最後の夜の展開は不要だったかなと思う。

ちなみに、氏の多くを読んでいるが、現時点、個人的に好きな、氏の・・・と云うより、読んだ全ての小説の中で、ベスト10に推したい一冊がある。

それは、「 TUGUMI (つぐみ) 」。




 映画も粗はあるものの、その雰囲気は十分に及第で、心が温かくなる傑作。

お勧めしたい。

 今年も始まります。 年末年始、仕事もせずにゆっくりさせて頂きました。

 不思議なもので、時間があると、読書のスピードも遅い。 焦ったり、急いだりする必要はないだろう。が、切り替えて、キビキビと参ります。



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